生活だけが人生だ

ぽんこつ社会人の めそめそメソッド

『勝手にふるえてろ』を観た日

 

 ルノアールのココアは甘くない。前に品川あたりのルノアールでココアを頼んだら、シュガースティックやガムシロップが一緒に出てきて不思議に思った。飲んでみるとほんのり苦かった。誰も見ていないのに、なんとなく恥ずかしくて何も入れずにいたら、店員がシュガースティックたちを下げてしまった。

この日は21時すぎから始まるレイトショーで『勝手にふるえてろ』を観るために、1時間ほど近くのルノアールで時間をつぶした。この映画は夜遅くに観た方がいい映画だ、となんとなく思った。注文したココアが来たので、口をつける前に砂糖を入れた。

 

私は映画を観るとき、ちょっとしたことをきっかけに過去の記憶を思い出しがちだ。ヒガシノさんという先輩が同期に「そのトレーナーいいね、どこの?」と話しかけていた、その相手が着ていたトレーナー。全く同じものを映画の主人公が着ていたので、週明けにヒガシノさんにそのことを話そうかなと思ったりしていた。

 

ヒガシノさんは、自分の話をするのがかなり好きな人だ。音楽や格闘技、紅茶の文化などカルチャーっぽいものが好きらしいのだけど、必ず「ぼく、そういう人たちとよく飲むんだけど…」と自分側に話を引き寄せる。好きな物事に対して、そこまで自分を介入させられるのは凄い。私も好きなモノやコトに対してもっと積極的にならなければと思う。ヒガシノさんは、この映画についても「あーあれね!ぼく松岡茉優が好きでさあ…」と言っていた。

 

物語後半にさしかかると、主人公が自宅の玄関で泣くシーンがあった。そのとき私は、独り仰向けで泣いた夜のことを思い出していた。自分の何かが世間一般とズレているように思えて、社会のスピードに上手く順応できなくて、どうしようもなく苛立って泣く夜だ。大縄跳びで自分だけが引っかかった時のような、悔しさと恥ずかしさの混じった苛立ちだ。映画の中の彼女と状況は違うけれど、きっと感情の種類は同じだと思った。この原作者は、私のみっともない夜のことをどこかで見ていたのか、とさえ思った。映画館内を埋め尽くす彼女のひどい嗚咽に、後方の席でカップルがクスクスと笑うのが聞こえて、私は少し泣いた。

 

上映が終わると、一人で観に来た人たちだけがさっさと退出して、カップルは席でのんびり話していた。売店で買ったカフェラテのカップは、底の方に泡だけが溜まって、もうどうしようもなくなっていた。それを出口で捨てて足早に映画館を出ると、目の前をスケボーに乗った男性たちが次々に通り過ぎて行く。駅へ向かう途中、左手にぶら下げた紙袋がガサガサと音を立てて少し耳についた。映画を観る前に買った化粧水やヘアトリートメント、香水などがきっちりと行儀よく収まっているのが見える。最近できた気になる人に、気になってもらおうと思って買ったものだった。

地下鉄のホームへ降りるエスカレーター。スクリーンの中で泣く彼女と、それを笑う観客の声が頭の中を何度も行き来する。シャンプーの香りがする女の子、を偽装しようと選んだ香水たちは、買った直後よりも輝きが減ったように見えた。

 

 

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