生活だけが人生だ

ぽんこつ社会人の めそめそメソッド

たったひとつの「すごく好き」より、   たくさんの「ちょっと好き」

 

「好きなものとか、趣味とかないの?」

仕事のトレーナーであるサワイさんは、距離感が丁度いい人だ。プライベートの話を単体ですることはあまりない。冒頭の台詞も仕事のトレーニング上、必要な話題だった。

「音楽が好きだったら必ず音楽ネタを一案入れてみるとか、趣味を軸に企画したら楽しいし案数も増やせると思うよ」

私は企画案をたくさん出すことが得意ではなかった。おそらくそれは、企画職の新人にはよくある悩みだと思う。

問題は、私に趣味と呼べる趣味がないことだった。

 

「まあなんでもやってみることだ。食いもんと一緒で食ってみなきゃ好きかどうか分からんから」 

これは私の「無趣味問題」に対して、フエダさんという会社の偉い人にもらったアドバイスだ。フエダさんはフランクな人だ。この日も「最近どう?ここ誰の席?サワイ?座っちゃお」と言って私の隣に座ったので、せっかくだからとゆるく相談したのだ。「とにかく食わず嫌いしないことだな」と言い残してフエダさんは去って行った。

確かに私は、趣味において食わず嫌いしがちだった。続かなかったら無駄になるとか、誰よりも詳しくならないと趣味と呼べないのでは、とか考えがちだ。趣味という言葉のハードルを自分で上げすぎていたのかもしれないと思った。

 

「私も、これが好き!みたいなのはないけどなあ・・・たぶん『ちょっと好き』くらいでもいいと思う」

もう一人のトレーナーであるミズシマさんは、物事の見方が素直な人だ。私の「無趣味問題」についてミズシマさんは、学生時代に趣味で陶芸をやっていて、それが陶芸関連の仕事が来た時のモチベーションになった、というような話をしてくれた。

趣味を入り口に企画をすることは、その仕事を「楽しい仕事だ」と感じるための一要素であり、仕事に必要な情報を集めたり、知識を深めていく作業を楽にしてくれるものなのだと思った。つまり「ちょっと好き」をたくさん持っておけば、よりたくさんの仕事を楽しいものにできる、ということかもしれない。

「食わず嫌いしなさんな」というフエダさんの言葉を紹介すると、ミズシマさんは「いいこと言うなあ」と言って笑っていた。

 

 「すごく好き」をひとつ作るより、「ちょっと好き」をたくさん持つ方が、飽きっぽい自分には向いているかもしれないと思った。

サワイさんの「趣味とかないの?」という一言から、思いがけず悩んでしまったけれど、それをきっかけに良いヒントが得られた一日となった。