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ぽんこつが頑張って社会人をしています

アフター5を知った日

金曜のお昼休み、私は会社の食堂で遅い昼食を取っていた。向かいの席では同期のマキちゃんが、イヤホンで音楽を聴きながら、ノートパソコンで調べ物かなにかをしている。タイミングを逃して昼のピークを過ぎてしまうと、なかなかランチに誘う相手も見つからない。そういう時は、既に食事を済ませて午後の作業に取り掛かっている同期を探して、向かいの席に置かれた荷物をどかしてそこに座り、自分のぼっち飯回避に付き合わせる。今日のマキちゃんは忙しそうだ。午後の会議の時間が迫ってきているのかもしれない。無駄話を持ちかけたら迷惑かなあと思いながら社食のハンバーガーを咀嚼していると、マキちゃんが顔を上げてイヤホンを外した。

「コワィエテン、行かない?」

3回ほど聞き返してやっと、自分が『怖い絵展』に誘われているということを理解した。

 

マキちゃんは「怖い」という感情が好きな人だ。

彼女とは新人研修の時、あまりにも暇だったので、一緒に『シリアルキラー展』を観に行ったことがある。確かその時に「怖い」が好きだと聞いたのだった。詳細までは訊かなかったので、何故好きなのか、どう好きなのかまでは分からない。

「ちょうどサヤコちゃんと今日行こうって約束してたの。」

私が「おけ」と返事をすると、マキちゃんはまたイヤホンで耳を塞いだ。

 

サヤコちゃんは長女である。

弟と妹がいると聞いたことがある。これはなんとなくの印象だけれど、サヤコちゃんは本来の人間性的には末っ子気質なのではないかと思う。たまたま第一子に生まれたがために、「しっかりしなきゃ!」という意識を育まれたタイプだと思う。

 

この日もサヤコちゃんが先に美術館でチケットを買っておいてくれた。サヤコちゃんは出先から直接向かい、私とマキちゃんは会社から一緒に行く予定だったのだが、マキちゃんの仕事が終わらなかったのだ。マキちゃんを待つ間にスタバであたたかい飲み物を買った。期間限定のラテは、フリーズドライカリカリになったラズベリーか何かがトッピングされていた。普段はあまり買わないけれど、金曜なので少しぐらい贅沢してもいいか、と思ったのだ。会社のエントランスにはクリスマスツリーが飾られている。なんとなく、ツリーの横に立って待つことにした。

 美術館のある上野へ向かう途中、電車の中でマキちゃんはずっとそわそわしていた。「慌てて出てきたからやり残した仕事があるんじゃないか不安」と言ってブツブツつぶやきながら何度も手帳を開いて確認していた。開かれたページには罫線を無視した大きな文字でメモが書かれていた。マキちゃんは罫線を気にしない人だ。

 

その日は雨が降っていて、駅から美術館まで急ぐのに傘が邪魔だった。マキちゃんは自分のせいでサヤコちゃんにひとり寒い思いをさせている自責からか、相当な早足だった。私はその後について走っていたはずだったのだが、突然背後からマキちゃんの声で名前を呼ばれた。全く知らない人の傘を追いかけていたらしい。

 サヤコちゃんは大きなビニール傘をさして列に並んでいた。イチョウの葉っぱがプリントされた珍しい傘、と思っていたら無地の傘の上に本物の葉っぱが張り付いているだけのようだ。周りを見渡すとみんなイチョウ柄の傘をさしていた。美術館がある上野の森公園は紅葉の名所でもある。

 

『怖い絵展』はとても人気で、平日だというのに長い行列ができていたけれど、客たちが苛立っているような様子が無かったのが印象的だった。

みんなSNSなどで前情報を仕入れていて、心づもりをして来ているのだろう。美術館スタッフの案内が丁寧でスムーズだったこともあるかもしれない。私が捨てそびれたラテのカップを邪魔くさく思っていたら、スタッフが代わりに捨ててくれたりもした。

 

この展覧会は解説が肝だ。少なくとも私たち3人はそう思っていたので、入館するなり真っ先に音声案内の機器を借りた。結局、観覧を始めたのは閉館40分前だった。それに対して音声案内は約30分だったので、その中で解説されていない作品は飛ばして観る必要があった。結果的には、時間的にも体験的にもちょうどよかった。混み合う館内で元を取ろうと無理に全作品を観ようとしても、どうせほとんどは忘れてしまうし、残るのは人混みに揉まれた疲労感だけだ。プロの学芸員がオススメするものだけをじっくり鑑賞する方が、よりリッチな絵画鑑賞になるのではないかと私は思う。

 

展示は、一言で言うととても良かった。内容についての感想は後日改めて語ろうと思う。後日改めたいくらい私の中で豊かな体験となったのだが、マキちゃんとサヤコちゃんの感想は案外あっさりしていて、なんと言っていたか覚えていないくらいだった。二人はこの後何を食べるかで盛り上がっていた。

 この日はとても寒かったので、私たちは温かい料理フィルターをかけて店を探した。しかし結局、どこも混んでいたので鳥料理のお店に入り、焼酎のお湯割であたたまることにした。10分ほど店の前で待つ間、忘年会らしき団体がクリスマスツリーの前で記念写真を撮る様子などをボーッと眺めていた。東京に来てはじめてのクリスマスは、何故か去年までより少しワクワクしている。彼氏ができた訳でもないのにそう思うのは、ただただ東京という街のクリスマス演出が上手いからだと思う。

 

「オオツキさんと付き合うことになりました」

サヤコちゃんには以前からオオツキさんという好きな人がいて、二人で飲みに行ったり趣味のライブに行ったりと積極的にアプローチしていた。サヤコちゃんから話を聞くに、いい雰囲気そうなのでいずれ上手くいくだろうとは思っていたけれど、改まって報告を受けると友人として嬉しかった。私の学生時代の友人たちはあまり恋愛に積極的でない人が多かったので、サヤコちゃんから聞くエピソードたちはリアルで、羨ましくて、それが楽しかった。寒いからと焼酎のお湯割を飲んでいたのに、いつしかよく冷えたワインに切り替わっていた。

 

美味しい料理とお酒と、恋の話と、家族の話、仕事の話をして、これが社会人の楽しみ方なのだなと思った日だった。

 帰る頃には酔っていたこともあり、電車に乗ってからの記憶はほとんどない。たぶんすぐに家に帰ってぐっすり寝たのだと思う。

 

  

怖い絵 (角川文庫)

怖い絵 (角川文庫)

 

  

 

たったひとつの「すごく好き」より、   たくさんの「ちょっと好き」

 

「好きなものとか、趣味とかないの?」

仕事のトレーナーであるサワイさんは、距離感が丁度いい人だ。プライベートの話を単体ですることはあまりない。冒頭の台詞も仕事のトレーニング上、必要な話題だった。

「音楽が好きだったら必ず音楽ネタを一案入れてみるとか、趣味を軸に企画したら楽しいし案数も増やせると思うよ」

私は企画案をたくさん出すことが得意ではなかった。おそらくそれは、企画職の新人にはよくある悩みだと思う。

問題は、私に趣味と呼べる趣味がないことだった。

 

「まあなんでもやってみることだ。食いもんと一緒で食ってみなきゃ好きかどうか分からんから」 

これは私の「無趣味問題」に対して、フエダさんという会社の偉い人にもらったアドバイスだ。フエダさんはフランクな人だ。この日も「最近どう?ここ誰の席?サワイ?座っちゃお」と言って私の隣に座ったので、せっかくだからとゆるく相談したのだ。「とにかく食わず嫌いしないことだな」と言い残してフエダさんは去って行った。

確かに私は、趣味において食わず嫌いしがちだった。続かなかったら無駄になるとか、誰よりも詳しくならないと趣味と呼べないのでは、とか考えがちだ。趣味という言葉のハードルを自分で上げすぎていたのかもしれないと思った。

 

「私も、これが好き!みたいなのはないけどなあ・・・たぶん『ちょっと好き』くらいでもいいと思う」

もう一人のトレーナーであるミズシマさんは、物事の見方が素直な人だ。私の「無趣味問題」についてミズシマさんは、学生時代に趣味で陶芸をやっていて、それが陶芸関連の仕事が来た時のモチベーションになった、というような話をしてくれた。

趣味を入り口に企画をすることは、その仕事を「楽しい仕事だ」と感じるための一要素であり、仕事に必要な情報を集めたり、知識を深めていく作業を楽にしてくれるものなのだと思った。つまり「ちょっと好き」をたくさん持っておけば、よりたくさんの仕事を楽しいものにできる、ということかもしれない。

「食わず嫌いしなさんな」というフエダさんの言葉を紹介すると、ミズシマさんは「いいこと言うなあ」と言って笑っていた。

 

 「すごく好き」をひとつ作るより、「ちょっと好き」をたくさん持つ方が、飽きっぽい自分には向いているかもしれないと思った。

サワイさんの「趣味とかないの?」という一言から、思いがけず悩んでしまったけれど、それをきっかけに良いヒントが得られた一日となった。

2018年やりたいことリスト

今週のお題「2018年の抱負」。

今年の抱負は「やりたいことを全部やる」に決めた 。

随時更新のやりたいことリスト。

 

やりたいこと

  • 近所にお気に入りのケーキ屋さんを見つける
  • 近所にお気に入りのラーメン屋さんを見つける
  • お〜いお茶新俳句大賞」に応募する
  • iphoneXに機種変更する
  • 行ったことのない県に行く
  • お弁当を習慣にする
  • 武蔵野美術大学の卒展に行く

 

やったこと

新幹線で飲酒した日 - Poncots.com


 

 

新幹線で飲酒した日

 

2018年1月3日10時6分、帰京の新幹線は時刻ぴったりに名古屋を出発した。

前日からなんとなく、「明日は新幹線で酒を飲もう」と決めていた。以前からやってみたいと思っていたことのひとつだ。昨日の時点では、ハイボール缶とチーズちくわのイメージだったが、実際には車内が混み合うことが予想されたので、ニオイの強いちくわは断念し、チーザと缶チューハイにした。

宝酒造缶チューハイはパッケージがミニマルでかわいい。以前、大学時代の友人であるエリコが、新幹線でこのチューハイを飲んでいる写真をツイッターに載せていた。その時から自分もやってみたいと思っていたのだ。

 

新幹線での飲酒が思いのほか満足感があったので、こんな感じで小さな「やりたいこと」をひとつずつやっていきたいな、と思った。「今年の目標は『やってみたいことを全部やる』にしようと思う」とツイートしたら、ちょうどエリコからいいね通知が来た。今ポストしたものでなく、昨日のツイートに対してだった。タイムラインの上部に表示されたので、プロフィールページを見に来たのだろう。私もよく人のプロフィールページを見るけれど、なんとなく相手に知られるのが恥ずかしくていいねはしない。彼女はそこは気にしていないのだろう。エリコは人の目をすごく気にしているようで、そんな自分を割り切っているようで、割り切れていないようで、不安定な人だ。

 

明日から仕事始めの人が多いからか、指定席は満席だった。私がチーザをひとくち食べるたびに、右隣のおじさんがコーヒーをひとくち飲む。試しにふたくち連続で食べてみたら、おじさんは普通にひとくちだけコーヒーを飲んだ。終始ニンテンドーDSを操作しているおじさんだった。左隣の女性は首をもたげて眠っていたけれど、「左手に富士山が見えます」と車内アナウンスされると目を覚まして写真を撮っていた。両隣の二人は品川で下車した。

 

私は東京駅で下車し、丸の内方面の改札へ向かった。途中、駅弁の売店が目に入ったので、これから新幹線で昼食を取るであろう人たちに混じって買おうかと思ったけれど、好みのものがなかったのでやめた。

 

今は自宅方面に向かう地下鉄の中だ。

時刻は12時半。

ハンバーガーが食べたい。

最寄駅にはバーガーキングがある。

明日も仕事は休みだ。

 

私は私の機嫌をとるのが得意だ。

ちょっとくらい嫌なことがあったとしても、

必ず2018年を良い年にできると思う。

 

 

 

 

やりやる2018リスト

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